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あの日から1ヶ月が経った。

長い長い地獄のような1ヶ月。

あれから私は彼に3度犯された。


お父さんには何も言っていない。

でも花野さんのことを露骨に避けているから、何かあったんじゃないかとお父さんは勘ぐっている。


「お母さんと喧嘩でもしたのか?」

数日前、不意にそう聞かれたけれど、私は「別に」とだけ答えた。


私のせいで家の中は重くぎこちない空気になっていった。

ゆっくりと壊れていく家庭。


…これが、彼の望んだことなんだろうか…。



・ ・ ・ ・ ・


「おはよー柚希!」

「…おはよー」

「あれ?どしたの?具合悪いの?」

「んー…ちょっとダルいかも。でも大丈夫」


心配してくれた友達に無理につくろった笑顔を返す。


…昨日も夜中まで彼に弄ばれて、股の奥がジンジンと痛んで体が重い。


この生活はいつまで続くんだろう。

…就職して家を出たら、解放される…?

でも卒業まではまだ何ヶ月も先だ。


昼休みになってもそんなことばかり考えてろくに食欲が出ない私は、友達に保健室に行くと告げてフラフラと教室を出た。


廊下は行き交う生徒や教室から漏れる声でざわめき合っていた。

…もっと静かな所に行きたい…。


ふと、窓から吹いた風に髪がなびかれる。

朝方降っていた雨で空気は重くよどんでいた。

けれどその憂鬱な湿っぽさが逆に今の私には心地よかった。


…校庭の紫陽花でも見に行こうかな。


そう思い立って、私は生徒玄関へと歩を進めた。



・ ・ ・ ・ ・


「あっ」


外に出て雨の匂いに満ちた空気を深く吸い込んでいると、校門の前によく知る人影があるのに気付いた。


…お父さんと花野さんだ。


お父さんの手には大きなお弁当箱が大事そうに抱えられていた。

きっと、忘れたお弁当を花野さんが届けに来てくれたんだ。

そういえば花野さん今日仕事休みなんだったっけ…。


楽しそうに談笑している2人はどう見ても仲のいい夫婦だ。

誰もあの人の本性に気付くことはないだろう。

お父さんも、これから先もずっと知らないままなのかな…。

その方が、きっと幸せだよね…。


「…はぁ…」


…さて、2人に気づかれない内に早く校庭に行こう…。


「──…っ?」


校庭の方へ足先を向けたそのとき、背後からただならぬ気配を感じて私はとっさに振り返った。

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