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お母さんと一緒に夕飯を作って、久しぶりにみんなで揃って食事をした。
仲良く談笑する私とお母さんを見てお父さんは最初ポカンとしていたけど、夕飯が終わるころにはすっかり安心した様子で笑顔を浮かべていた。
元通りになった家族の団欒に私もホッと心を和ませる。
一方で彼だけは無表情のまま黙々とご飯を食べていた。
…きっと胸の内では私に対する怒りを募らせているはず。
それを知りながら、私はわざとらしいくらいに笑顔を振りまいてお母さんたちとの団欒を楽しんだ。
夕飯を終えて部屋に戻る。
すると案の定、部屋の中で彼が明らかな殺気を立たせながら待ち構えていた。
「…何なんだよ、さっきの」
ベッドに腰掛けている彼は私を鋭く睨み付けながら静かにそう呟いた。
「私がお母さんと仲良くしてたら、何か不都合でもあるの?」
いつになく強気な私に彼は少し動揺してるようだった。
「…ローターだけじゃ物足りなかったのか?」
動揺を隠すようにして彼は邪険な笑みを作り、私のもとへと歩み寄る。
…そんなことを言われたって、私はもう怯まない。
目の前にいるのはただのわがままな子供。
何も怖くない。
「私…あなたの言う通り、何もわかってなかったんだね」
「……は?」
「それなのに、あなたのこと助けたいなんて言って…本当に馬鹿な女だよね」
伏せた目を上げて私は彼を真っ直ぐに見上げた。
「宗太くんは、本当はお母さんのこと大好きなんでしょ? …“母親”っていう存在以上に」
「……っ」
真実を突きつけられた宗太くんの表情がみるみるうちに歪んだ笑みに変わっていく。
…本心を隠すための偽りの顔。
こんな虚勢も嘘も全部暴いて壊してやるんだから。
「はぁ? あの女に変な入れ知恵でもされたか?」
「全部聞いたよ。お母さん想いで毎日本当によく尽くしてくれたって」
「っ…それで、あんな女の話を鵜呑みにしたのかよ」
「だって本当のことでしょ?」
「いい加減その脳天気な頭どうにかしろよ。そんなもん全部嘘だよっ!」
「……ッ!」
肩を掴まれドアに押し付けられる。
けれど私は怯まず彼を睨み付けた。
「嘘ついてるのはそっちでしょ! 何が『この家をめちゃくちゃにする』よ! ただお母さんを奪い戻して自分のものにしたかっただけでしょ!?」
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