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 二宮はそのわざとらしい言い訳を吐くなり足早に保健室を出て逃げ去って行った。


「……はぁ…」


ようやく心音が落ち着いてきた私は縮こまらせていた体の力を抜いて、ゆるりと脚をのばす。


すると、コン と何か固い物に触れた。

見るとそこには二宮の携帯が落ちていた。

すかさず手にとって、画面に映っている私の写メを削除する。


…良かった。これで脅される心配はなくなった。


二宮が間抜けだったことに感謝しつつ他にも撮られた写メはないかとデータフォルダーをチェックしてみると、どこのサイトから拾ってきたかSMチックなどぎついアダルト画像がビッシリと詰まっていた。

…救いようのない奴…。


「どぉー? 体調は?」


うんざりと顔をしかめた最中、先生の声が近付いてきて私はすぐに布団から顔を出した。

それと同時にカーテンを開けて先生が入ってきた。


「…その様子を見るとあまり良くはなってないみたいね」


先生が心配そうに私の顔を見つめる。

どうやら今の面持ちは端から見たら相当具合が悪そうに見えるらしい。

確かに、とてもいつも通りに勉強をしていられる精神状態じゃない。

それに…肉体的にも。


「今日はもう早退します…」


渇いた喉から絞り出した声は重病人のようなか細さだった。

 


事の一切を知らない友達はただただ純粋に私の体調を気遣い、玄関まで付き添ってくれた。


「…じゃあ、気をつけてね。バイバイ」

「ホントにありがと。また明日ね」


欲の汚れなんてまるで知らない優しい友達は控えめな笑みを浮かべて手を振る。

手を振り返して学校を出る、淫らな欲にまみれた私。


そして、溢れ出しそうな欲情を抑えながら私は急ぎ足で家へ向かった。



家族は全員仕事に出ていて家の中は怖いくらいに静まり返っていた。

部屋に入って鞄を適当に投げ置く。

そして崩れるようにベッドに座った。

思い出したくもない保健室での出来事が勝手に脳裏でコマ送り再生される。


…不快だったのに、悔しいけれど他人に体を弄くられたことで欲望に確かな火が灯ってしまった。

理性のきかない最低な体。

でも、こんなにも飢えているのはこの胸のせいだ。


ブラウスのボタンを全て外して胸をさらけ出す。

糸で縛られて、動くたびにシャツに擦れていた乳首は少し赤く腫れているように見えた。


「…っあ!!」


そっと撫でると頭が真っ白になるくらい強い快感が走った。


「っあ、あ!」


摘むと無意識に体が震えて抑えきれず声が漏れる。

ずっと刺激を与えられ続けていたそこは相当敏感になっていた。

壁に寄りかかって目を閉じて、甘い快楽に意識を溶かす。


何も考えられなくなるくらい堕ちてしまいたい……


私は夢中で胸を愛撫した。




「あ、デジャブ」


「──っ!!」

聞き慣れた声
聞きたくもない声

一気に頭が冴えて体が硬直する。


「俺は幽霊か何かか?」


私のあからさまな反応に、お兄ちゃんはクスクスと笑う。


「…な…んで…っ」

「今日は早く終わりマシタ。奈津こそ、なんでもう帰ってきてるの?」


相変わらずの涼しげな笑みでイヤミったらしく私に問い掛ける。


…私がどんな目に合ったのかもしらないで……



「…同じクラスの男子に犯された」


私の中では今やどうでもよくなった出来事だけど、あえてお兄ちゃんに告げてみた。

未遂じゃなく最後までやられてしまったような悲壮感を出して…。

これでさすがの鬼畜も反省するだろう。


「コンビニでエロ本買わされたとき、写メ撮られてた。それで脅されて…」


……。


短い沈黙。


その後お兄ちゃんから返ってきた言葉は「へぇ」の一言だけだった。

 

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