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夏見はなかなか感情を表に出せないタイプらしい。
テストでいい点とって先生に誉められても、バレンタインに女子からチョコもらっても、眠たそうな顔でポケーっとしてて、当時の私はつくづく愛想のない奴だなーと思ってた。
でも実は内心では結構浮かれてたんだそうな。
話せば話すほど夏見が私とかなり趣味の合う面白い人だとわかってくる。
高校生活のことをあれこれ振り返り、時計の話題に戻って江戸時代のカラクリの話へ…。
夏見との会話は本当に楽しくてお酒もおつまみもガツガツ進む。
そして、時間もあっという間に過ぎていった。
「もう11時だ」
夏見が時計を見て呟く。
「ほんとだ…」
そろそろおひらきにしましょうかという雰囲気。
…お酒飲みすぎて頭の中がうにゃうにゃする…。
これで私がもっとデロンデロンに酔ってたら「しょうがない、とりあえず俺ん家に…」なーんて流れになってたかなぁ。
…まあそんなドラマみたいなことあるわけないし、これ以上醜態晒すわけにはいかないし……
「帰る?」
夏見を引き止める理由はもうない。
私はうつむいて「うん」と物悲しく答えた。
トイレで用を足し、未練たらたらな気持ちをどうにか押さえて、おぼつかない足取りでレジに向かう。
…と、ぼんやり突っ立ってるのかなと思っていた夏見が自身の財布からお金を出してお会計を済ませていた。
「な…っ! 私が…!」
「いい。時計もらったから」
しれっとそんなことを言って夏見はお店のドアを開ける。
慌てて追いかけ外に一歩踏み出すと、一段と冷えた風に煽られ、あまりの寒さに夏見を掴もうとした手がビキッと張り詰めた。
「びゃぁあぁ! 寒いぃい゙ぃっ」
「店戻りたくなるな」
「うんうん!寒すぎっ! …って、そんなことよりお金…っ」
「時計で十分」
「そんな…ほんとにいいのっ?」
「うん」
「…じゃあっ、絶対絶対今日のこと同級生に言っちゃダメだからね!」
「わかった。広瀬がフェラ下手だってことは誰にも言わない」
「んなっ?! へっ下手じゃないもん!」
「へぇー」
うがっ…、今更になってからかい始めやがったコノ野郎!
それとも本当にヘッタクソと思われてる?
どっちにしろムカつく!
あああヤバい…興奮したから頭ぐにゃぐにゃしてきた…。
ぐにゃぐにゃぐにゃもじゃもじゃもじゃ……
「…じゃあ、私のテクがどれほど素晴らしいものか、じっくりと体感させてあげましょうかっ?」
・ ・ ・ ・ ・
…お酒の力は恐ろしい。
アルコールに脳を支配された私はとんでもないことを口走り、その勢いのまま夏見を引っ張ってホテル街へ連れ歩き、適当なホテルの一室をゲットしてしまった。
寒い中ウロウロしてる間にだんだんと酔いは覚めていき、いかにもラブホテルですといった雰囲気の部屋を見た瞬間、緊張が体内で嵐のように吹き荒れ、酔いなんてものは瞬く間に吹き飛ばされた。
真っ白い大きなベッド、その脇には赤い変な形状のイス…いわゆるセックスマスィーン。
なんか安っぽい絵画、隅っこにはスロット台…。
ここは、紛れもなくラブホテルだ…!
あばばばばば
なんて所に来てるの私ああああっ!!
無理無理無理無理!
いくらときめいたとはいえ、やっぱり同級生とそんなふしだらな関係になるなんて無理だって! 恥ずかしすぎるって!!
ラブホテルオーラに圧倒され立ちすくんでいる私とは対照的に、夏見は普通にコートを脱いで、どっこいしょといった感じで普通ーにベッドに腰掛けた。
…夏見は今一体何を思っているんだろう…。
抵抗すらしないで黙ってここまで付いて来てくれたってことは…、ヤる気満々?!
夏見ってそんなガツガツいけるキャラだったっけ?!
彼女作るよりペタゴラ装置作ってたいとか言って淡白アピールしてたくせに…!
なんだかんだで性欲は有り余ってるゼっていうこと!?
「脱がないの?」
「はいっ?!」
「コート」
「あっあっ、あぁ! うん、そだねっ」
悠々とベッドに座る夏見に指摘され、石化していた私はわたわたとコートを脱いだ。
そして夏見の隣りに行く勇気なんてありはしないのでソファーにちょこんと座る。
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