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「……」

「……」


ぅわあああっ 沈黙が痛い!苦しい!

テ、テレビつけようかな…。
でもつけた途端AVが流れたら嫌だ!死ぬっ!


なにもできずまたしても石化する私。

その横目で夏見は黙々と靴下を脱ぎ始めていた。

素足になってそれから何をするつもり!?
まさか服も脱ぐのっ?

と、気にしてない素振りを装い次の行動に目を見張っていると、夏見は服を着たままベッドの中に入り、フカッと枕に頭を乗せてなんとまあ安らかに目を閉じた。


「……」

「……」

「夏見」

「ん」

「…寝るの?」

「うん」


寝るんかーーい!


えっ、もしかしてここに来たのって家に帰るのが面倒くさかったから?
早く寝たかったから?

そうなの? そうなんでしょ、草食男子!!


何はともあれ安堵した私はドッと体の緊張を解した。


「んじゃあ、私も寝よっと」

ニーソを脱いで畳んでソファーの隅に置いて、髪から抜いたシュシュをテーブルに置く。

結いあとのついた髪を手ぐしで整えながらベッドに潜り込み、端っこギリギリのところで夏見に背を向けて横になる。


…うん、やっぱラブホのベッドは気持ちいい。

程よい弾力のマットと枕、そして淡い照明に早くも意識が奪われていく。

良かった。思ってたよりもすぐに眠れそう。


…けれど、至福の心地にまどろんでいたのもつかの間、背後から聞こえてきたベッドの軋む音に私の心身は鞭を打たれたように叩き起こされた。


「こら」

「はっ、はいっ!?」

「素晴らしいテクは」

「え゙っ…?」


えええっ? 実は期待してらっしゃったんですかっ? 草食男子でしょアナタ!!


「あれはっ…つ、つい口走っちゃってその…、…っ!」


夏見の問いかけに言葉を詰まらせていると、不意に髪にふわりと優しい感触が走った。

心臓が高鳴り、呼吸までも詰まってしまう。



その感触はそっと髪を掻き上げ、さらけ出されたうなじに触れた。

「…ひっ」

冷気が染み入り、背筋がゾクリと騒ぐ。


冷たい夏見の指が、私のうなじを撫でている…。

たったそれだけのことなのに、ただならぬざわつきが何度も背中に走って頭の中がパニック状態になる。


「ねっねっ寝るんじゃないの!?」

「この状況で寝れるわけない」

「なっ、じゃあっ、寝るって言ったのは私をおびき寄せるための巧妙な嘘だったのね?!」

「凄い言いようだな。…正解だけど」

「っあ…!」


ギシッとひときわ大きなスプリング音がしたかと思うと、夏見の気配が急速に近くなり、生温かい吐息がうなじに降りかかった。


それと同時に熱をもった舌が滑るように下から上へ這っていく。


激しくなる背筋の痺れにたまらずシーツを掻く。


どんどん熱を高めていく夏見の口は濡れたうなじに吸いつき、時折歯を立てて、絶え間ない刺激を私の体に送り込む。


「っく…! んっ、ぅ…」


急に熱情的になった夏見に翻弄されて脳が揺らぎ、熱に浮かされた吐息が勝手に漏れ出す。


…でも、どんなに気持ちよくても相手は同級生。

背徳感と羞恥心が胸につっかえ、甘ったるい声を聞かれる気恥ずかしさに口を手の甲で押さえる。

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