操られ人形 01 02 03

 

今は体育の授業中。

生徒達は体育館へ移動した為、教室内は静まり返っている。

だが、そんな教室内の片隅でコソコソと物音を立てている怪しい人影が一つ…。

女子の物と見られる可愛らしいマスコットのぶら下がった鞄のファスナーを恐る恐る開き、中をあさる男子生徒。

目が隠れるほどにボサボサに伸びきった髪型から不気味な印象が漂うこの少年の名は笹原。

笹原は鞄の中からクシを取り出し、それに絡まっている髪の毛を一本つまむと、ニタリと口角を吊り上げた。

そしてクシと鞄を元通りに戻すと一番後ろの自分の席へ向かい、今度は自身の鞄をあさり始めた。

飾り気のないシンプルな鞄から出てきたのは現代では到底目にかかることのないまがまがしいワラ人形。

リョウはその精密に人型に作られたワラ人形の胴体に先ほど採取した髪の毛を押し込んだ。

(…ふふ。これでもう僕のものだね、美園さん…)

 

・ ・ ・ ・ ・

 

次の授業は社会。

堅苦しい内容と担当教師のお経のように延々と続く解説ゆえに生徒達が最も気だるいと感じる時間だ。

机に突っ伏しいびきをかく者、隠れて漫画を読む者、皆各々好きなことをして退屈な時間を潰している。

笹原が荒らしていた鞄の持ち主である美園も皆と同じように机の下で携帯をいじり暇を持て余していた。

美園の2つ斜め後ろに座る笹原は美園の姿を見やり不気味に微笑む。

そして片手を机の中に入れ、呪文のような文字が刻まれたシルバーリングをはめた人差し指を置いておいた人形の体にそっと這わせた。

「……っ?!」

美園の体がピクリと揺れる。


(やだっ、何…っ?!)

突然太ももに走った不快な感覚に美園は動揺しながら、虫でも這っているのかと足を確認する。

その様子を後ろから見ていた笹原は満足げに笑い、今度は人形の乳房の辺りを円を描くように撫でた。

(いや…っ!)

人間の指が触れるような感覚が執拗に胸にまとわり付き、美園は得体の知れない恐怖になすすべもなく、ギュッと目を閉じる。

(なんなのこれ…っ、あ!)

不快でしかないはずなのに、その感覚が胸の突起を通り過ぎた瞬間不本意にも美園の中で快楽が目覚めてしまった。

(違う…っ、駄目、こんなの…気持ち悪いだけなのに…!)

必死に自分にそう言い聞かせるが、感覚が敏感になった所に触れるたび抑えようのない快感が湧き上がってしまう。

 

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