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「…よく言えました」


グシャグシャになった髪を指でとかされ、涙まみれの頬にキスを落とされる。

そんな慈愛に満ちた行為に心を容赦なく掻き乱され、私は堪らず彼にキツく抱きついた。


「…爪、好きなだけ立てていいからね」

「ふぇ…っ、あ!! あぁ…っんんん!んふ…っんんんーーッ!!」


柔らかな声色とは裏腹に、猛る彼の切っ先が膣内を獰猛に抉り突き上げ始める。

悲鳴を漏らした唇は深い口付けに塞がれ、狂い咲く快感を声に出せない私はその代わりに彼の背を掴む手に歯止めもかけず力を込めた。


「んんっ!ふ、ッうんん!んんぅぅっ…!!」


ゾクゾクと激しい疼きが背筋を駆け上がって脳天で弾ける。

痙攣する恥部は彼の熱に摩擦されるたび歓喜の蜜を吹きこぼし、卑猥な音を立てている。

ずっとイき続けているような果てのない恐悦に満たされ、私は頭の中が真っ白に染まり尽くすまで彼を求め、溺れ続けた。



・ ・ ・ ・ ・


目を開けると、視線の先にはさっきよりも照明の暗くなった高い天井が広がっていた。


…あれ?

何で私布団の中にいるの?

あれっ? 樹さんはっ!?


「……っ!」


まさか私、気絶してた!?


状況を察知して、おもむろに起き上がって辺りを見回すと、樹さんはソファーで煙草を吸いながら動揺している私を見て笑っていた。


「えっと…私…っ」

「30分ほど寝てました」

「30分っ!?」

「何か飲みますか?」

「え、あ…っ、とりあえずお水下さい」


まだパニック状態の脳内にさっきまでの強烈な情事が蘇る。


…セックスで気絶するなんて…どんだけ感じてんだよ私…っ!


込み上がる羞恥に顔を熱くさせていると、「どうぞ」とお馴染みの涼しげな笑顔で、ご丁寧にキャップを開けてくれたミネラルウォーターのペットボトルを差し出された。


「ありがとう御座います…」


恥ずかしさから樹さんの顔をみることができず、あからさまに顔をそらしながそれを受け取って、私は水を一口飲み込んだ。


腰掛けた樹さんの重みでベッドがキシリと軋む。

その音に同調して心臓がドクンッと疼いた。


「ごめんなさい。結花さんが可愛かったので激しくしすぎてしまいました」

「かっ!可愛くなんかないですよっ!」

「いえ、十分可愛かったですよ。特にイかせて下さいと言ったときの表情とか」

「うわーーっ!そんなこと言ってません!」


耳を塞ぐと樹さんはあはははと声を出して笑った。


ドSだ…っ
この人、根っからのドSだっ!


「本当に、凄く良かったです。ありがとう御座いました」

「……っ」


“ありがとう御座いました”

その、事を締めくくるような言葉に途端に胸が痛んだ。


…もうこれで終わり?

さようならなの?


「…結花さん?」


優しい問いかけに、私は未練がましさいっぱいの情けない顔を彼に向けた。


「…また、会ってくれますか?」


恐る恐る想いを吐き出すと、樹さんはあやすように私の頭を撫でてくれた。


「そう言って頂けて光栄です。こちらこそ、わたしで良ければまたお誘いして下さい」


髪を伝って降りてきた指先が震える唇に触れる。

私は当然のことのように口を開いて人差し指を口内に招き入れた。


「…っ…!」


舌を撫でられ、ピクンッと体が跳ねる。

たったこれだけのことで心が震え上がってしまう。


…どうしよう。また疼いてきた…。


乱れる吐息を抑えながら、私は更に指を深く咥え込んで舌を絡めた。


「でもね、結花」

「……?」


不意に届いた声。

“さん”がついてなかったことに一層胸が騒ぎ立つ。


上気した視線を送ると、樹さんは悪辣な雰囲気を漂わせニッコリと微笑んだ。



「次からは手加減してあげないよ」





‐END‐

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