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「必要量を採取するまで10分もかかりませんでしたよ。ご協力ありがとう御座います」


そう言う男の手には小ぶりのビーカーが握られていた。

男が動くたびにいっぱいに注がれている濁った透明の液体がコプリと揺れる。


…まさか…それって私の…っ


身じろぐと同時にお尻に感じた冷たくヌルリとした水の感触がよぎった考えを確信に変えた。

…あのビーカーに入っているのは私の愛液だ。


羞恥がドッと込み上がり、現実から目を背けるように私は男から顔をそらした。


「良かった。まだ理性はしっかり残っているようですね」

「……っ」


男の静かな笑い声が劣情を更に煽る。


あんなものビーカーに採ってどうするつもりなんだろう…。

“試作品をテスト”という男の発言を思い出し、再び恐怖心が浮上してくる。


「さて…」

男はビーカーをテーブルに置くと、そう呟いて私の片足を掴んだ。


「ひっ…!」

私はとっさに目を閉じる。


──カチャ、カチャッ シュルル…ッ


足に走るのは圧迫が解かれていく解放感。

一体何をされているのかと恐る恐る目を開くと映り込んだのは、拘束ベルトから外された足ともう片方の足の拘束も解いていく男の姿だった。


「えっ…!?」

思いもよらない光景に素っ頓狂な声が漏れる。

足の拘束具を全て取り去ると、男は目を丸くしている私を見つめながらゆったりと語りかけてきた。


「ずっと同じ体勢で疲れたでしょう。試作品を運んでくるのでそれまでゆっくり休んでいて下さい。腕の方も後ほど外しますので」


そして男は呆気にとられている私を置き去りに部屋を出て行った。


「……」


静まり返った部屋を改めて見回す。


…もしかしたら…逃げ出すチャンスが現れるかもしれない。

まさか拘束を解くなんて…。

疲れ果ててまともに動けないだろうとでも思ったのか。


淫欲から覚めた身体は着実に回復していく。

まだアソコがジンジンするけど…これならもう全速力で走れる。


…視線を止めた先には媚薬入りの注射器。

スキを突いて男にアレを刺してグダグダになったところを……。

私は希望を見出し、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返した。


──ガチャッ


6度目の華麗な脱出劇を終えた頃、男がガラガラと荷台を押しながら姿を現した。

何事かと荷台を見ると、そこには大きな植木鉢が一つ乗っていた。

何の変哲も無いごく普通の植木鉢。

中には普通の土。植物は生えていない。


…これが試作品?


部屋の真ん中までそれを持ってくると、男はビーカーを手に取った。


──バシャッ

「……っ!?」


ビーカーが逆さまに反され、中に入っていた私の愛液が勢いよく植木鉢に降り注ぐ。


「なっ…」

何っ? 何やってんのこの人!?


異常な行動を起こしたにもかかわらず男の笑顔は相も変わらず涼しげだった。


「面白いものが見れますよ」


そう言って男はドン引きしている私の腕に手を伸ばしてきた。


──ガチャ、ジャラッ…


手首に巻きついていた手錠を外され、ついに私は自由の身になった。

テーブルに戻り、書類にペンを走らせていく男。

その姿からは警戒心をまるで感じない。

…いける…!


私は静かに体を起こし、勢い良く椅子から飛び降りようとギュッと椅子に両手をついた。


「──ひっ!?」


身を乗り出そうとしたその瞬間、何かが私の手首を掴んだ。

とっさに視線を下ろすと、手首に親指くらいの太さのツタが絡み付いていた。

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