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柔らかな雰囲気とは裏腹に、花野さんは昼はお惣菜屋さん、夜はスナックで休みなくずっと働き詰めているらしい。


私はますますお父さんに早く結婚してもらいたいと思った。

お父さんと結婚して、花野さんが少しでも楽になったらいい。

家族が増えたらきっと楽しくなるだろうな。

息子さんはどう思ってるかわからないけど…。

ていうかいきなり中3の弟ができるってかなり複雑だけど…。


でもみんな今よりゼッタイ幸せになれるよ。


「ねぇ、結婚はいつするの?」


帰り際ポツリと尋ねてみると2人は夕日に照らされた顔を更に赤くさせてどぎまぎしていた。


・ ・ ・ ・ ・ ・


それからというもの私は花野さんと会うたびしつこいぐらい結婚コールを繰り返し続け、

そんな私に押されるようにして、2人は私が高校3年生に進級するのと同じ時期に籍を入れることに踏み切った。



そして花野さんと息子さんのお引っ越し当日。


「柚希たちが高校を卒業してからと考えていたんだけどなぁ…」

そう渋っていたくせに、お父さんはニッコニッコ顔で2人が来るギリギリまで家の中を掃除していた。



──ブロロロ…ッ


「あっ!来た来たっお父さん来たよーっ!」


窓から家の前に軽自動車が止まったのを確認して、私とお父さんは急いで玄関を出た。

期待と緊張で心臓が飛び出しそうなくらい高鳴る。


花野さんとは、お父さんに内緒で会ったのも含めてかれこれ20回以上は会ってきた。

でもいつもいつもタイミングが悪くて、息子さんとは一度も会うことができなかった。


…名前は宗太(そうた)。

花野さんいわく、すっごく親想いでイケメンで成績もよくて、自慢の息子なんだそうな。


実際はどんな人物なのか…私は自分の弟となる男の登場を今か今かと待ちわびた。


──バタン


助手席から、背の高い男性が姿を現す。

175…いやそれ以上はあるだろうか。

顔立ちは小動物系の花野さんそっくりで、すぐにこの人が息子さんなんだとわかった。

でも、ほにゃら〜とした雰囲気はなくキリッとしていて男らしい。


花野さんと同じ栗色の髪は短くカットされていて、なんだかスーツを着せたら若手の営業マンっぽくなりそう。


それぐらい、私なんかよりずっと大人っぽかった。

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