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「今日から宜しくお願いします」


玄関に入ると花野さんと宗太くんは深々と頭を下げた。

私達も「こちらこそ」と言って頭を下げる。


「今更かしこまって、なんか照れるね」

そう言って私と花野さんは笑い合った。


「ほら、宗太っ。柚希ちゃんに初めて会うんだから挨拶しなきゃ!」


花野さんにふられて、宗太くんは私の方を見向いて軽く頭を下げた。


「初めまして、宗太です。宜しくお願いします」

「こちらこそ…!柚希です、宜しく…っ」


慌ててお辞儀する私にニコリと微笑みかける宗太くん。


花野さんの、まるで男性アイドルの話しでもしてるかのような息子自慢を「親バカすぎ〜」とからかっていたけど…これは確かに胸を張って言える『自慢の息子』だ。


…この人が私の弟になるんだ…。


抱いてはいけないときめきを胸の内に押し込めて、今日から私の、そしてみんなの新しい生活がスタートした。



・ ・ ・ ・ ・


2人が来てかれこれ10日。

新生活やら新学期やらで慌ただしく毎日が過ぎ去っていき、ようやくゆったりとした日曜日が訪れた。


のんびり9時半に起きて下に降りると、広いリビングはシンと静まり返っていた。

お母さんは夜の仕事は辞めたけど、お惣菜屋さんは今も続けていて、きっと今日も夕方くらいまでお仕事だ。

お父さんは部活で学校。


…みんな働き者だなぁ〜。


なんてしみじみ感心しながらソファーに寝転ぶと、洗面所の方からグォォンという洗濯機の音が聞こえてきた。


…宗太くんいたんだっ!


「わーっ!洗濯は私がやるよっ!」


慌てて洗面所に駆け込むと、宗太くんは部屋干ししてある私やお母さんの下着類をホイホイとカゴに放り込んでる最中だった。


「ふっ服とかも私が畳むからっ!」

「でも今まで柚希さんがやってたから…」


「いいのっ!洗濯当番は私!」


「…わかった…」


しぶしぶ承諾すると、宗太くんは短くため息をついて頭を掻いた。


「家事とかやってないと、落ち着かないんだよな…」


そのまま部屋に行っちゃうのかと思っていたから、そう呟やかれるはすごく意外だった。


宗太くんは食事や身支度以外はほとんど自分の部屋にいる。


驚くことに高校も一緒だけど一年と三年じゃ会う機会なんてなくて通学時間も別々だから、今までちゃんと話しをしたことがなかった。


私としては、もっとたくさん話して仲良くなりたい。

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