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「…ッ…く…!」


舌は円を描くように乳房を這っていく。

徐々に先端に近付いていくその運びに鼓動が急かされて、頭に重く響くくらい心臓がドクンドクンと脈打つ。


「…ふぁ…っ!!」


緊張を極限に高められた胸の頭頂部についに舌先がたどり着いた途端、唇でそこを緩くついばまれ、予想のしてなかった刺激に私は思わず体を跳ね上がらせてしまった。


「感じてんの?」

「…っ違う!」

「でも固くさせてんじゃん」

「違うっこんなの…っ、あ!」


キュッと摘み取るように唇が先端をくわえて、不規則に蠢く舌先が執拗に襲いかかる。


未知の感覚は一層激しくなって体中を駆け巡っていく。

緊張が知らず内に蕩けていってるのに気付いて、私は慌てて気持ちを引き締めた。


「もうやめてっ…!」


腕をひねっても相変わらず手はビクともしないし、胸から流れる刺激はどんどん激しくなっていく。

意識が白濁していきそうになるのを必死で抑えながら、私は頭を起こして瞳に力を込めて彼を睨み付けた。


「なんで…っ、こんなことするのっ?」


辛い過去をこんな形で私にぶつけたって何の解決にもならない。

恐怖する反面で私の中で彼を救いたいという感情が灯っていた。



「もう止めようよっ…! これからどうするか、ちゃんと2人で考えようよ…!」

「…これからどうするかなんて、もう決まってる」


彼の鋭い眼が真っ直ぐに私を捕らえる。


「こんな家めちゃくちゃにしてやる」

「っ…な…に言って…」


「ムカつくんだよ。馬鹿みてぇに幸せ幸せってほざいてるお前も、何も知らないでヘラヘラ笑ってるお前の父親も…っ!」


感情を剥き出しにしてそう吐き捨てると、彼は一度小さく溜め息をついてまたいつも通りの冷ややかな表情に戻して話しを続けた。


「俺は前の生活に戻ってもいい。俺をこんな風にしといて1人だけ幸せになろうとしてるあの女も、絶対に許さねえ」

「……っ!!」


身を起こした彼の手がスカートの乱れた無防備な下半身に伸びていく。

私がどんなにお気楽な女だろうとこれから何をされるかくらいは嫌でもわかる。

私は心臓が凍りついていくのを感じながら考えるよりも先に彼の腕を掴んで制止させた。


「や、やめてっ…お願……っあ! ぐッ…!!」


一瞬、何が起こったかわからなかった。


突然喉が息苦しくなったと同時に目の前が反転して、後頭部に衝撃が走った。

 

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