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「んじゃ、準備室行こーぜ」
「…あのっ、カズヤ…!」
「あ? 何?」
「ごめん、私…っ、もうこういうことは出来ない…!」
「……は?」
カズヤはあからさまに不機嫌そうに眉間にしわを寄せて険しい表情を作る。
…ここで怯んじゃいけない。
カズヤが諦めてくれるまで、ちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃ…!
「本当はずっと嫌だったの、こういう所でやるのも、玩具とか縛ったりとかするのもっ…」
「何言ってんの? 今さらそんな面倒くせぇこと言うなよっ」
「はっきり断らなくてごめんなさいっ…でも、もう私は出来な」
「いきなり出来ねーとか言われても、もう先輩も来るから無理だよ」
「…せんぱい…?」
予想外のカズヤの反論に、思考が止まって言葉が途切れてしまう。
“先輩も来る”
カズヤが言ったことをもう一度頭の中で繰り返すと、ザワザワと悪寒が背筋に流れてきた。
「どういうこと…?」
今までにないほどの不安に駆られながら恐る恐る聞き返す。
…いや、もう悠長にカズヤの説明を聞いている場合じゃないのかもしれない。
この状況でまともな話し合いはできない。
とにかく今は、一刻も早くここから逃げるべきだ。
──ガララッ
突然ドアが開き、その乱暴な物音に私はヒッと短い悲鳴を漏らしながら身体をビクつかせた。
目を向けると、柄の悪い二人の男子生徒がニヤニヤと品のない笑みを浮かべながら教室内に入ってきていた。
「あれー? 準備室でヤるんじゃねぇの?」
だらしなくこちらに歩いてきながら、一人が間の抜けた声で問いかける。
「いやぁ、なんかコイツがいきなり無理とか言い出して…」
媚びた愛想笑いを作りながらカズヤはばつが悪そうに頭を掻く。
「はぁーっ? なんでも言うこと聞くんじゃなかったのかよー?」
「すんません、ホントに今になって出来ないって言うんで…」
「…ま、いーんじゃね?」
品定めするような粘着質な視線を私に向けると、男たちはニタリと笑った。
その気味の悪い笑みに私は思わず後ずさる。
「どっちかっつーと、無理やり犯す方が燃えるし」
「……っ!」
その一言を聞き、私は一歩、また一歩と後ずさった。
机にぶつかり、じりじりと横にずれていく。
…ドアまでは結構な距離がある。
どう考えても逃げ道が見つからない。
焦りと恐怖で思考がどんどん白く掻き消されていく。
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