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「こんな結果になっちゃったけど、カズヤにはちゃんと、こういうことは出来ないって言ったの。ずっと嫌だったってはっきり伝えたの」


夏見の顔が見たくて、無意識に足が一歩前に出る。

でもやっぱりそばにまで行くのは怖かった。

もっと夏見の気持ちが知りたいのにわからない。

もどかしい距離感に私は唇を噛み締める。


「…私、馬鹿な女から卒業できたかなっ…?」

「…うん」

「ほんとっ?」


あっさりと認めてもらえたことに胸が弾み、私はもう一歩距離を詰める。


「じゃあっ、あのっ…」


弱気な心を奮い立たせて声を強める。


相手の反応をビクビクしながらうかがってばかりいた自分を変えるんだ。

怖がらずに気持ちを真っ直ぐに伝えるんだ。

大切な人に、自分のことをちゃんと見てもらえるように。


「また…っ、友達になってくれる…?」


意を決して私はその言葉を吐き出した。

“拒絶されたらどうしよう”という不安が瞬く間に溢れて胸を締め付ける。


夏見は窓を向いたまま何も答えてくれない。

耐えがたい沈黙がますます身体を圧迫して、呼吸が苦しくなっていく。


「……っ」


掛け時計と自分の心音だけが響く静寂の中、夏見が私の方へと向き直った。

そして、一言も発しないまま一直線にこちらへと歩み寄ってくる。


相変わらず夏見の表情から感情を読み取ることはできない。

何を考えているのかさっぱりわからない彼が徐々に近づいてくることに軽く恐怖も感じた。

ただならぬ緊張感に足元がかすかに震えてしまう。


私の目の前までくると、夏見はピタリと立ち止まった。


「…っあの…」


張りつめた空気に耐え切れず、何の考えもなしに私は口を開く。

すると、夏見は何も言わずに唐突に右腕を振り上げた。


──バシッ

「いたぁっ!?」


高く上げられた彼の手は真っ直ぐに私の頭へと落下した。

突然の打撃に私は思わずへっぴり腰になり、頭を押さえながら目を丸く見開いて夏見を見上げる。


「やっぱり馬鹿だ」

「えぇぇっ!? どうしてっ」

「なんでこのタイミングで“友達”なんだよ」

「えっ、だっ、だめなの…っ?」

「馬鹿」

「いたいっ」


再び頭にチョップを食らい、私は身をかがめる。


…ていうかなんで私叩かれてるのっ…!?

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