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「カズヤ、ちょっと廊下見てこい」
男に顎で指図されたカズヤは駆け足でドアへと向かう。
男に組み敷かれ、今の状況に震えながらも私は徐々に希望を芽生えさせていた。
火事が起こったなら逃げるしかない。
…そしたらこの男たちからも逃れることができる。
心に光が宿る。
私は一刻も早く男たちが火災におののいて逃げ出してくれるのを待ちつつ、すぐに起き上れるようにと身構えた。
「煙とか見えないから、この辺ではないみたいっすね」
ドアから上半身だけ出して廊下を見まわすと、カズヤはドアを閉めながら落ち着いた声でそう言った。
「なら大丈夫だな」
……え……っ?
「ヤバくなったら窓から逃げられるだろ」
「この高さなら余裕っしょ」
何言ってんの…!?
「んじゃ、続きやりますか」
「…っいや…!!」
二階から飛び降りる!?
私はそんなこと出来ない!いやだっ、死にたくない!
命が危険にさらされ、か弱く怯えてる場合じゃないと本能が悟ったのか、簡単に大声を出すことができた。
私は悲鳴を上げながら、上に乗っかっている男を振り落とそうとがむしゃらに身体を動かす。
「おい、カズヤ、縛るもん早く」
必死に暴れる私とは裏腹に、男たちは虫でも弄んでいるかのような態度で私を見下している。
「顔おさえてて」
「はいよ」
髪と顎を掴まれて無理やり真正面を向かされる。
視界に映り込んできたもう一人の男は、破ったガムテープを構えていた。
「いやあぁっ! あっ、うぅ…っ!! ん…っんんーーっ!」
強烈な粘着力が私の口を完全に塞ぎ込む。
すると一気に、絶望と恐怖と息苦しさが襲ってきた。
泣きじゃくって鼻水まで出てきていたせいで呼吸が難しい。
これ以上暴れるとますます酸素が追い付かなくなってしまう。
私はもう、どうすることもできなくなってしまった。
「あれっ、もう抵抗しねぇの?」
「…これでいいっすか?」
「おー、サンキュ」
カズヤが男にピンクのビニール紐を渡しているのを私はただ呆然と眺めていた。
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