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「……っ!!」
教室に一歩踏み入れたところでビクッと足を止める。
窓際に誰かが一人佇んでいる。
誰もいないだろうと油断していた私は必要以上に驚いて、ドアに手をかけたまま硬直してしまった。
窓の外を眺めていた人影がゆっくりとこちらを振り返る。
「…夏見…っ?」
ほの暗い夕日に包まれたその馴染みのある眠たそうな面持ちに、私はますます困惑しながらも歩を進めてドアを閉める。
…どうして夏見がまだ教室にいるの…?
まさか幻覚?
ジッと目をこらして相手を見つめる。
何を考えているのか全く読めない飄々とした様子はまぎれもなく夏見本人だ。
私の妄想の中の夏見はもうちょっとわかりやすい反応をしてくれる。
「…無事?」
「ほえっ!?」
予期せぬ言葉をかけられ、思わず声が上ずる。
…ぶじ? 『無事』のぶじっ?
「うっ、うん…!」
なんのことかわからないまま頷いた直後に、カズヤたちに襲われたことを指しているんじゃないかと気が付いた。
そして脳内にビビッと電流が走って、一つの憶測が浮かんできた。
「警報機鳴らしてくれたのって、夏見なのっ…?」
「…さぁ」
夏見は私から視線を外してポツリと答えた。
…絶対に夏見だ…!
根拠はないけれど、私はそう確信した。
夏見が私を助けてくれた…。
込み上がる喜びや心苦しさに泣きそうになりながらも夏見の元へと歩いていく。
そして教室の真ん中辺りまで来て歩みを止める。
夏見の目の前まで行く勇気は出せなかった。
「助けてくれてありがとう…っ。警報が鳴ったあと野竹先生が見回りに来てくれたから、カズヤたちには何もされなかったよ」
「……」
「夏見は…大丈夫? 反省文書かされたりとか、停学になったりとかしない?」
「…別に、何も」
「そっか、良かった…。でもいっぱい怒られたでしょ? 迷惑かけてごめんなさい…」
「俺が勝手にやっただけだから、謝らなくていい」
夏見らしいぶっきらぼうな優しさが胸に染み込んできて、目の奥が熱くなっていく。
でもいつまでもメソメソなんてしてられない。
強くならなきゃ。
夏見に呆れられないように、認めてもらえるように。
再び窓の方を向いた夏見を、私は数メートル離れた先から真っ直ぐに見つめる。
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