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「馬鹿馬鹿言われてもわかんないよ! 何っ?もう友達になんかなりたくないってこと!?」
「そういうことじゃない」
「じゃあ何!?」
「わかるだろ」
理科室のときと同じ言い回しに私は少しカチンときた。
わかんないからこんなに必死こいてもがいてるのに、何その『理解してて当然だろ』みたいな一方的な態度…っ!
「だからわかんないよ、夏見がどう思ってるかなんて! いっつも無口で無表情なんだもん!わかるわけないじゃん!!」
「…っ、好きでもない奴をわざわざ助けたりしない」
「だからなに!?」
「ここまで言ったんだからわかれよっ」
熱の上がった脳内をフル回転させて、夏見の言葉をグルグルと繰り返す。
“好きでもない奴をわざわざ助けたりしない”
逆に考えると、好きだから助ける…?
…イコール、私のことが好き…っ?
けれど、その答えを導き出しても熱は冷め上がらなかった。
それどころがますます上昇して、沸騰しそうなくらいに頭も身体も焼けついていく。
「わかれよ、じゃないよ! なんで私に答えを求めさせるの!? なんで自分から気持ちを伝えてくれないのっ!?」
「…俺がそういうこと言える人間じゃないって知ってるだろ…っ」
「…し…っ、知るか馬鹿ぁ!!!」
苛立ちがピークを越え、私は怒号を響かせながら夏見の右頬を思いっきりつねり上げた。
間近でよくよく見ると、夏見の顔はつねる前から既に赤くなっていた。
普段は徹底して無表情なぶん、その反応だけで夏見の気持ちは十分すぎるくらいに伝わってきた。
…でも、私の熱は治まってくれない。
もう自分ですら収拾がつかなくなってしまっていた。
「人間性なんか関係ない!そういう大切なことはちゃんと口で伝えるものでしょっ!
それに、夏見だって私がどれだけ馬鹿で惨めで根暗な人間かわかってるでしょ!? はっきり言ってくれなきゃ、わかんないよっ…!!」
最後の方は涙声になりながらも、私は胸の内に溜まっていた熱を一気に吐き出した。
息を切らせながら夏見を睨み上げる。
すると夏見は、ふいと私から顔を反らして視線を俯かせた。
「……す…っ、」
すぐに掻き消えてしまうほどの微かな声が夏見の口から漏れ、私はドクンッと心臓を高鳴らせながら全神経を耳に集中させる。
夏見の顔がどんどん赤くなっていく。
そしてたっぷりの間を使い、夏見は観念したように再び口を開いた。
「…好きです」
「……っ…!」
全身が喜びに打ち震え、様々な感情が大粒の涙となって溢れ出す。
クシャクシャになった顔を両手で覆いながら私は「夏見の馬鹿」と、子供みたいに泣き喚いた。
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