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「ほんとに…迷惑かけてごめんね」

「迷惑じゃないし、色々させてもらったから気にしなくていい」

「そっ…、え? 色々? 色々ってなに? あのあと何かしたのっ?」

「……」

「ちょっ…色々ってなにーっ!?」


何も答えず足早に職員玄関へ向かっていく夏見を追いかけて必死に問い詰めても、結局夏見は真相を語ってはくれなかった。


・ ・ ・ ・ ・


玄関を出ると外はすっかり暗くなっていた。

こんなに遅い時間に下校するのは初めてかもしれない。


「送ってく」

「えっ! 大丈夫だよっ」

「送らせて下さい」

「…っ…じゃあ…、お言葉に甘えて…」


結局気圧しされて、夏見に家まで付き添ってもらうこととなった。

いつもの帰り道を夏見と並んで歩くのは妙に気恥ずかしい。

今さらになって、告白をして恋人になった という事実を実感して身体が熱くのぼせ上がってしまう。


…本当に、夏見は私の彼氏…なんだよね?


たった今自分の隣りにいる人を再確認するべく目を向ける。

すると、ちょうど私の方に顔を向けていた夏見と視線がぶつかった。


「へっ? どうしたのっ…?」

「なんでもない」


ぶっきらぼうに答えると夏見は何食わぬ顔でそっぽを向いた。


…私が振り向いたとき、夏見は私の顔じゃなくてもっと下の方を見てた気がする。


もしかして…と勘が働き、私は夏見の手を握ってみた。


「……っ!」

「手、繋ぎたかったの?」

「……」


返事の代わりに夏見の顔が赤く染まっていく。

その反応を見て、私はやっと夏見に勝てた気がして思わず口元がニヤけた。


「だんだん夏見の思ってることがわかるようになってきた気がする」

「…っわからないままでいい」


そう言う夏見はやっぱり照れくさそうで、私は勝気な笑い声を漏らしながら空を見上げた。



藍色に染まった夜の空。


そこには大きな満月とたくさんの星が、万華鏡から覗いた世界のようにキラキラキラキラと輝いていた。




* 終 *

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